自民忒背点。。。
民主党は改選32議席を大幅に上回り参院の与野党逆転に成功し、第1党に躍り出た。29ある1人区の争奪にかけた小沢一郎代表の戦略は的中、ぶ厚い自民党の岩盤を崩した。小沢氏にとって、93年の非自民政権樹立以来と言えるほどの政治的完勝となった。次期総選挙での政権交代に向け、与党を早期の衆院解散に追い込むシナリオを描いており、攻勢を加速することは確実だ
第21回参院選(改選数121=選挙区73、比例代表48)は29日投開票が行われ、獲得議席数は自民37、民主60、公明9、共産3、社民2、国民新党2、新党日本1、諸派0、無所属7となった。
昔の自民党なら、安倍晋三首相が参院選惨敗の責任をとって即、退陣を表明してもまったく不思議ではなかった。
9年前、当時の橋本龍太郎首相が44議席で退陣した故事を持ち出すまでもなく、政権の前途はとてつもなく厳しいものとなったからだ。
参院で与党が過半数割れした以上、野党が国会運営の主導権を握るのは確実だ。11月1日に期限が切れるテロ対策特別措置法の延長も容易ではあるまい。一部メディアによる「安倍バッシング」も一層苛烈になろう。
首相が逆風を承知で続投の道を選んだのは、政権選択は衆院選で、という原則を定着させるためにも妥当な判断だ。3年に1度必ずある参院選のたびに、首相が交代するようでは政治の安定は望むべきもないからだ。
それにしても自民党の負け方は尋常ではなかった。28日付の「何たる選挙戦」でも指摘したが、今回の参院選では国政の根幹であるはずの憲法も教育も安全保障もどこかに吹き飛んでしまった。政策論争はほとんど話題にならず、「わたしたちの年金をどこにやった」「役人や大都市の金持ちだけが優遇されている」という有権者のすさまじい怒りのエネルギーが与党候補をなぎ倒した。
象徴的なのは、参院自民党を束ねてきた青木幹雄議員会長の地元、島根県で自民党候補が新人に敗れ去ったことだ。岡山では、参院幹事長本人が落選した。
平成元年、リクルート事件と消費税導入の逆風によって自民党が参院選で惨敗したとき、当時の土井たか子社会党委員長は「山が動いた」と驚喜した。
安倍政権は、連合国軍総司令部(GHQ)による占領政策の呪縛を脱するため戦後レジーム(体制)からの脱却を掲げて船出した。今回の参院選で、戦後レジームの申し子ともいえる利益誘導型の「古い自民党」という「山」が完全に崩れたのは首相にとってかえって良かったかもしれない。
安倍首相が、まっさきにやるべきことは、選挙結果への厳しい反省とともに、内閣・党幹部の刷新と人材の登用である。
安倍政権の躓きは、人事の失敗に起因することがあまりにも多い。総裁選の論功行賞だけで起用したとしかみえない人事や「政治とカネ」にまつわる疑惑をうまく説明できない閣僚を何人も起用した責任は免れない。
ものは考えようである。少々の多数派工作をしても参院での野党優位は崩れない以上、新たな陣容で正々堂々と戦後レジームからの脱却に再チャレンジするしか首相に残された道はない。
残念だったのは、民主党の小沢一郎代表が開票日の夜に、体調不良のため報道陣の前に姿をみせなかったことだ。一日も早い回復をお祈りするが、いろいろな意味でちょっと気にかかる。